通過儀礼
お疲れ様です。
小林です。
写真の木のヘラ。このヘラにどういったストーリーがあるのかをご説明させてください。
小林が生まれ育ったのは東京の下町「月島」
言わずと知れたもんじゃの街です。
この街では青年から大人になったという証として、
親から子へと木のヘラを受け継ぐという、
通過儀式がございます。
あれは小林が大学生だったある日の夕飯前の事。
無口な父親が小林の事を呼びました。
「お前、今日がなんの日か分かるか?」
「?」
「ほら、これ...。」
そうして差し出されたのがあの木のヘラです。
「成人、おめでとう。次はお前が次の世代へと託すんだ。」
そう言い終えると、母親がグツグツと煮えた
もんじゃが盛られたホットプレートで持ってきました。
ついにこの日が来たのか、感極まりながら食べた、
あの日のもんじゃはいつもよりしょっぱかったのを今でも覚えています。
その日から小林は常にあの木のヘラを身につけながら生きています。
上司の理不尽な叱責を浴びている時は、手の中に忍ばせた木のヘラを強く握りしめて。
贔屓にしている弱小野球チームが15年ぶりに
優勝するあと1アウトの時、合掌したその両手の中にはあの木のヘラが。
女の子にフラれたあの日の帰り道、不甲斐ない小林は泣きながら木のヘラを噛み締めて帰り道を歩きました。
そんな人生の大事な時を共に過ごす木のヘラ。小林が次の世代へと受け継ぐ時が来ても、
自分のヘラは心の中で変わらず共に時を過ごしてくれるのだと、信じています。
「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」
小林